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改正建築基準法 令和元年6月25日施行

建築基準法の改正案が平成30(2018)年6月27日に公布され、令和元年(2019年)6月25日建築基準法が改正されました。

改正のポイントについてご説明いたします。

今回の改正は、空き家が増加傾向にある中で、住宅を宿泊施設などそれ以外の用途に変更して活用することが求められており、安全性の確保・既存建築物の有効活用を両立し、そういった状況のなかで建築規制を合理化・緩和していく必要から成立したものです。

建築基準法改正の2つのポイント

  • 3階建の戸建住宅等を他用途に転用する場合の規制の合理化

→延べ面積が200㎡未満の3階建ての建築物について、一定条件をもとに「耐火建築物」としなくてもよい。

  • 戸建住宅から他用途への転用の際の手続き不要の対象を拡大

→建築基準法上の用途変更申請手続が不要になる基準が100㎡から200㎡に。

解説

令和元年6月25日に施行された改正建築基準法について上記の2つのポイントの解説です。

  • 3階建の戸建住宅等を他用途に転用する場合の規制の合理化」について
出典:国土交通省(平成30年改正建築基準法に関する説明会)資料 P.43

以前までの旅館業法では簡易宿所営業または旅館・ホテル営業に関する建築基準では、3階以上の部屋で営業する際、「耐火建築物」でなければならないとなっておりました。

また、耐火建築物ではない戸建住宅等の3階部分は用途をホテルまたは旅館等の用途に変更することができませんでした。

つまり3階建の建築物で「耐火建築物」でないものでは、3階での営業ができませんでした。

今回の改正により、簡易宿所営業または旅館・ホテル営業を行う場合において、延べ面積が200㎡未満の3階建ての建築物については、一定の警報設備等を設置することを条件に、耐火建築物でなくてもよいことになります。

なかなか活用が進まなかった木造3階建てのような建物についても、今後は新たな利用法を見出せるようになります。

  • 戸建住宅から他用途への転用の際の手続き不要の対象を拡大」について
出典:国土交通省(平成30年改正建築基準法に関する説明会)資料 P.43

従前の建築基準法では、戸建住宅等から、旅館・ホテルなどの特殊建築物への用途変更をする場合、用途変更をする部分の延べ床面積100㎡以下までであれば、用途変更申請手続きが不要でした。

日本国内にある戸建て住宅は、延床面積100㎡~200㎡のものが多く、用途変更申請手続にかなりコストがかかることもあり、既存建物の活用が進まない大きな要因になっていました。

本改正によって、用途変更する部分の延床面積が200㎡までは用途変更申請が不要となりました

200㎡以下の戸建住宅等で旅館やホテル営業をしようとした場合、用途変更申請に費用をかけず、営業許可の取得ができることになりました。。

また、用途変更手続をする場合、「検査完了済証」を提出しなければなりません。

検査完了済証とは、「建築物及びその敷地が建築基準関連規定に適合している」ことを証する文書で、その建物が法律の基準に適合していることが認められたときに交付される書類

検査完了済証は後述する「既存不適格建築物と違法建築物」を見分ける場合に必要な書類です。しかし、実態として新築工事や増改築工事を行なった建物で検査完了済証が発行されていないものが多数存在します。古い建物であればあるほどその比率は大きくなります。1998年度時点の完了検査率(検査済証交付件数/建築確認件数)は37%〜38%となっています。

建築基準法は、多くの改正を重ねています。そのために建築時には基準を満たしていたものが、法改正によって基準を満たさなくなるという建築物が多く存在します。このような建築物のことを「既存不適格建築物」といいます。

既存不適格建築物とは、建築当時は適法だったものがその後の法改正などによって、現行の法令に適合しなくなってしまった状態の建築物のことをいいます。違法建築物との大きな違いは、建築当時には適法でですが、法改正のタイミングで適合しなくなったということです。既存不適格建築物は当時の法令を守って建てられたものであり、新たに増改築工事や用途変更などをする際には現行規定への適合が求められます。既存不適格建築物を建設時と同様の用途で利用している場合には合法な建築物とみなされます。それを建設時と異なる用途に変更する場合、一定の是正義務が生じる可能性があります。

検査完了済証は、既存不適格建築物か違法建築物かを判定するために用いられます。検査完了済証が未発行の建物物について用途変更手続をしようとした場合、用途変更申請をするのは難しいのが現実です。国土交通省が決めたガイドラインに沿って指定確認検査機関等が法令適合を証明する方法もあります。しかし、建築当時に遡って法令適合を確認することになります。したがって増改築などをしている建物についてはその証明は難しいちうことです。

改正によって既存不適格建築物である200㎡以下の戸建住宅を他の用途に変更しようとした場合には用途変更申請は不要になりますが、用途自体は変更されるので現在の建築基準に適合させる必要性があります。

既存不適格建築物でない200㎡以下の戸建住宅を旅館・ホテルとして営業しようとした場合、用途変更手続が不要にはなりますが、旅館やホテルに必要な建築基準を満たさなくてもいいと言うわけではありません。

検査完了済証が交付されていない物件についても、200㎡以下のものであれば旅館業申請が可能という認識をしている方も多いのです。しかし、実際はそういうことではありません。

「建築物の用途の制限に係る特例許可手続の簡素化」なので、建築基準の制限が緩くなるわけではありません。用途変更をする際、変更後の用途の建築基準を満たしていないと違法建築物になってしまいます。用途変更に関する手続が不要になるだけですので建築基準を満たす必要があるのです。

旅館業から住宅宿泊事業として営業をする場合には住宅からの用途変更自体が要りませんのでで、既存不適格建築物のまま営業することができます。

まとめ

①「3階建の戸建住宅等を他用途に転用する場合の規制の合理化
②「戸建住宅から他用途への転用の際の手続き不要の対象を拡大

となります。

上記のように、戸建住宅を旅館業法における旅館ホテル営業に利用しようとする場合、建築基準法が大きく関わってきます。国土交通省のデータによると、戸建住宅の90%以上が200㎡以下の建物ですので、今回の耐火構造や用途変更手続の省略に関する改正によって旅館業の要件を満たす物件が大きく増加すると考えられます。

参考資料
国土交通省「建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)について
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000097.html
国土交通省「既存不適格建築物及びその用途変更に関する資料」
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg3/chiiki/150130/item1-1-2.pdf

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